出典:[amazon]リムスキー・コルサコフ:作品集
リムスキー・コルサコフは、海軍兵学校に通いながら音楽家となった異色の作曲家です。天才的エピソードなどはあまり残されていませんが、1人の音楽家・教育者として音楽史において重要な役割を果たしました。
ストラヴィンスキーやプロコフィエフなど、リムスキー・コルサコフのもとで音楽を学び、のちに偉大な作曲家となった人物は多くいます。今回は、そんなリムスキー・コルサコフの作品の中から、組曲「シェヘラザード」と「ピアノ協奏曲」をご紹介します。
組曲「シェヘラザード」とは?
組曲「シェヘラザード」は1888年に作曲された交響組曲です。タイトルの通り「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」から着想を得て作曲されました。「シェエラザード」あるいは「シャハラザード」などと呼ばれることもあります。
千夜一夜物語の中には有名な「アリババと40人の盗賊」「シンドバットの冒険」「アラジンと魔法のランプ」など日本でもお馴染みの話が含まれています。
作曲と同年にサンクトペテルブルグにて初演され、リムスキー・コルサコフの死後1910年にはミハイル・フォーキンの振り付けによるバレエ作品にもなっています。
また、日本にも早くから紹介され、1925年に歌舞伎座にて演奏が行われました。そのとき指揮をしたのは作曲家の山田耕作です。演奏時間はおよそ45分程度で、中程度の規模の作品となっています。
「シェヘラザード」のあらずじ
妻の浮気を目撃したシャフリヤール王は、女性不信に陥ってしまいます。その後、街の女性を毎晩宮殿に1人呼び寄せ、一夜を過ごしては翌日に処刑するという残忍な行いをしていました。これに困った側近の大臣でしたが、大臣の娘であるシェヘラザードは、この行為をやめさせるためにシャフリヤール王との結婚を申し出ます。
シェヘラザードは毎晩シャフリヤール王のもとへ出向き、王の関心を引く話を聞かせます。話の続きを聞きたい王は、シェヘラザードを生かし続け、全ての話が終わったあと(千夜一夜)に2人の間に子供ができ、王の悪行を止めることができたという物語です。
楽曲編成や聞きどころは?
組曲「シェヘラザード」はリムスキー・コルサコフが40代のときの作品で、作曲意欲の旺盛な時期の作品とされています。4楽章構成となっており、当初はそれぞれの楽章に標題がありましたが、最終的に本人の意向により外されることとなりました。
第1楽章冒頭の迫力のあるメロディーは、暴君シャフリヤールを表現し、ハープの伴奏によって美しく奏でられるヴァイオリンが、シェヘラザードの語りを表現しています。
第4楽章ではバグダッドの祭りが激しく展開され、各楽章の主題が再現されます。荒れ狂う波の様子は、この作品のフィナーレを飾る重要なパートとなっています。
作品全体を通して、リムスキー・コルサコフのオリエンタリズムが溢れており、どの楽章も物語を彷彿とさせる映像的な作品です。
現在では標題とともにプログラムに表記される場合が多く、それぞれのタイトルは次のようなものです。
- 第1楽章・・・海とシンドバット
- 第2楽章・・・カランダール王子の物語
- 第3楽章・・・若い王子と王女
- 第4楽章・・・バグダッドの祭り。海。<船は青銅の騎士のある岩で難破>終曲
ピアノ協奏曲とは?
1882年から1883年に作曲されたピアノ協奏曲です。演奏時間は15分程度で、協奏曲としては非常にコンパクトな作品です。1884年にサンクトペテルブルグの無料音楽学校にて初演されました。
無料音楽学校とは、音楽教育を普及するために1862年から1917年まで続いた音楽学校です。リムスキー・コルサコフは1874年から1881年の7年間、この学校の校長を務めました。
この作品は、「ロシアの5人組」の仲間であったバラキレフの助言により、ロシア民謡による主題が用いられているのが特徴です。第1楽章の主題は、まさにロシアの民族音楽を彷彿させます。
またこのピアノ協奏曲は、弟子のグラズノフやラフマニノフにも影響を与えた作品と言われています。
楽曲編成や聞きどころは?
伝統的な3楽章構成となっています。しかしフランツ・リストのピアノ協奏曲を手本として作曲されたため、「アタッカ」を用いた途切れのない作品として作曲されています。完成後は、リストへ献呈されました。
アタッカとは、楽章や曲を区切らずに切れ目なく演奏する技法の一つです。ベートーヴェンの「交響曲第5番(運命)」の第3楽章から第4楽章にかけてや、メンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲など、さまざまな作曲家がこの技法を使用しています。
この技法を用いて作曲されたリムスキー・コルサコフのピアノ協奏曲も、始まりから終わりまで駆け抜けるように演奏されます。
金管楽器とともに高らかに始まる第3楽章が聞きどころで、ピアノのメロディもいっそう華やかな展開となるのが特徴です。
楽器編成は次の通りです。
- フルート
- オーボエ
- クラリネット
- ファゴット
- ホルン
- トランペット
- トロンボーン
- ティンパニ
- 弦五部
- ピアノ(独奏)
まとめ
いかがでしたか?今回はリムスキー・コルサコフの組曲「シェヘラザード」と「ピアノ協奏曲」を解説しました。組曲「シェヘラザード」はリムスキー・コルサコフのオリエンタル趣味が溢れる名曲で、演奏機会の多い作品です。演奏プログラムで見かけた際には、ぜひ足を運んで実際に聞いてみてください。
「ピアノ協奏曲」は短い作品ながらも、一気に駆け抜ける疾走感がある作品です。こちらは演奏の機会は少ない作品ですが、ラフマニノフにも影響を与えた作品と言われていますので、これを機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。
>>リムスキー・コルサコフってどんな人?その生涯や性格は?死因は?
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