エドワード・エルガー「威風堂々」「愛の挨拶」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころ・難易度は?

出典:[amazon]グレート・コンダクター・シリーズ/エルガー エルガー・コンダクツ・エルガー:交響曲第2番

ホルストとともにイギリスを代表する作曲家エドワード・エルガー(以下エルガー)。エルガーの作品はシベリウスやリヒャルト・シュトラウスなどの作曲家から高く評価され、現在では、眠っていた作品の多くが見直されつつあります。エドガーを象徴するもっとも代表的な作品と言えば「威風堂々第1番」や「愛の挨拶」が挙げられ、多くの人が耳にしたことがあると思います。そこで今回はエルガーの「威風堂々」と「愛の挨拶」について解説します。

威風堂々について

管弦楽のための行進曲集で、1番から6番まで作曲されました。なかでも1番はとくに有名で「イギリス第2の国歌」と称される作品です。日本でも運動会の表彰式などで聞く機会がありますので、誰しも1度は聴いたことのある作品だと思います。ちなみにアメリカでは、学校の卒業式や入学式で用いられているそうです。

1番から4番までは1901年から1907年にかけて作曲され、5番は1930年に完成されました。そして6番は21世紀に入ってから作曲家のアンソニー・ペインの補筆によって完成されています。1番から6番までの全てが「威風堂々」ですので、これを機会に覚えておくと良いかもしれません。「威風堂々」の原題「Pomp and Circumstance」はシェークスピアの「オセロ」第3幕第3場から採用されています。

1901年にリバプールにて初演された「威風堂々第1番」は好評を博し、3日後のロンドン公演でも大成功を収め、聴衆から2度のアンコールが求められました。この作品に感動した国王エドワード7世が「歌詞をつけて欲しい」と提案したのがきっかけで、「Land of Hope and Glory」(希望と栄光の国)の歌詞が付けられ「威風堂々第1番」の中間部で歌われるようになりました。そしてさらにエドワード7世は、エルガーに対し「君はいずれ世界中にくまなく広がる曲を作曲したね」と賛辞を送りました。

作品はエルガーの友人のロードウォルドとリバプール管弦楽団に献呈されています。

楽曲編成や聴きどころは?

とくに「威風堂々第1番」が有名で、序奏から堂々とした行進曲となっていています。中間部の「希望と栄光の国」の合唱部分は、聴衆も含めた大合唱となるのが通例で、サッカーイングランド代表のサポーターが試合の合間に歌うことでも知られています。

また現在のイギリスにおいて、国威発揚(こくいはつよう)の1曲としても扱われており、
毎年夏に開催される大音楽イベント「BBCプロムス」において、歌詞の始まりと共にエリザベス女王の顔が流されることでも知られています。

また、一度演奏が終わってもアンコールとなるのが通例とされ、アンコールでの大合唱も聞く人に大きな感動を与えます。

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難易度について

全音音楽出版社にピアノ独奏版があります。それによると「威風堂々第1番」は難易度Cに分類されていますので、中級程度の技術が必要となります。極端に難しい作品ではないので、チャレンジしてみるのも良いかもしれません。

愛の挨拶について

1888年、妻アリスとの婚約記念に送った作品です。エルガーが29歳のときにアリスと知り合い、周囲の反対を押し切りやがて二人は結婚しました。エルガーとの結婚によりアリスは家を勘当され、結婚式のアリス側の参列者はいとこ夫婦だけだったと伝えられています。

当時妻のアリスは作家としてすでに知られており、エルガーとの結婚の際に「愛の恵」という一編の詩を贈っています。「愛の挨拶」はその詩のお返しとして作曲されました。
音楽家としてなかなか成功しなかったエルガーを陰ながら支え、常に励まし続けた妻アリス。そんなアリスをエルガーは生涯にわたり大切にしました。

エルガーが妻について語った次の言葉が残されています。
「私の作品を愛するなら、まず妻アリスに感謝すべきだ」

これは、いまの自分があるのは妻アリスのおかげであることを伝える、心温まるエピソードとなっています。

楽曲編成や聴きどころは?

「愛の挨拶」はピアノ独奏版、ピアノとヴァイオリン版、チェロ独奏版などさまざまなアレンジがあります。とくにチェロ版は、柔らかいこの作品にピッタリの音色だと思います。またピアノ版は、発表会などでたびたび演奏されており、広く人気のある作品となっています。全体の流れはA(ホ長調)ーB(ト長調)ーA’(ホ長調)の3部構成となっており、最後にコーダが奏でられます。愛を語りかけるような旋律と、シンコペーションのリズムが作品に豊かな色彩を与えています。

難易度について

さまざまな楽器の独奏版が出ていますが、全音楽譜出版社のピアノ独奏版の難易度を調べてみたところ、難易度AからFまである中で「愛の挨拶」は難易度Cに分類されていました。
難易度Cは中級程度の技術が必要とされますので、初心者の方は十分な練習が必要になると思います。

まとめ

今回は「威風堂々」と「愛の挨拶」を解説しました。「威風堂々」が1番から6番まであるということを知らない方もいるのではないでしょうか。1番ばかりが有名ですが、ぜひ2番から6番までも聞いてみてください。「愛の挨拶」は心温まるメロディーですので、心がなんとなく疲れたときに聞くと、ほっと安らぐ作品だと思います。エルガーは他にも多くの作品を残していますので、お気に入りの曲を探してみてはいかがでしょうか。

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