ジャコモ・マイアベーア『悪魔のロベール』『アフリカの女』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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19世紀におけるグランド・オペラ黄金時代を築いた作曲家マイアベーア。マイアベーアはオペラ制作にとどまらず、舞台装置や台本、衣装、バレエといったさまざまな分野に着手し、後世のオペラの発展に多大な功績を残しました。残念なことに、20世紀に入って以降マイアベーアの作品が上演される機会は減少しましたが、近年、再びその作品が注目を集めています。そこで今回は、19世紀オペラにおける空前のヒット作『悪魔のロベール』とマイアベーア最後のオペラ『アフリカの女』について紹介します。

オペラ『悪魔のロベール』とは?

中世ヨーロッパの伝説に基づいて制作された5幕からなるグランド・オペラです。1831年にパリのオペラ座で初演を迎えた本作は「オペラ座史上空前のヒット作」となり、当時のフランス・オペラ界に新風を巻き起こしました。作曲当初は小規模なオペラ・コミックとして制作される予定でしたが、紆余曲折を経て、グランド・オペラに変更されています。

また、本作『悪魔ロベール』は、グランド・オペラ黄金時代の幕開けを告げる作品として、オペラ史上においても重要な位置を占めており、オペラ作品にオルガンを用いた先駆けが本作であるとも言われています。大好評となった本作は、初演後まもなく10ヶ国語へと翻訳され、ヨーロッパ各国で大きな話題となりました。

なお、この作品で「悪魔」が取り上げられたことにより、クラシック音楽界にちょっとした「悪魔ブーム」が起きており、オッフェンバックの『ホフマン物語』やグノーの『ファウスト』、そしてベルリオーズの『ファウストの劫罰』などは、『悪魔のロベール』のヒットを受けて作曲されたと言われています。

グランド・オペラとは?

マイアベーアにより確立されたグランド・オペラとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。グランド・オペラと称されるには、おおよそ以下の5つの条件が必要とされています。

条件その1・・・全5幕(あるいは4幕)であること
条件その2・・・聴衆にわかりやすい劇的な題材を取り扱うこと
条件その3・・・内容において、歴史的興味をそそるものであること
条件その4・・・大規模な合唱とバレエを伴うこと
条件その5・・・エキゾチックな異国趣味が含まれていること

これら5つの条件を兼ね備えたオペラをグランド・オペラと称するようです。マイアベーアによる確立以降、さまざまな作曲家がグランド・オペラ形式を採用し、ドニゼッティの『ラ・ファヴォリート』やベルリオーズによる『トロイア人』、ヴェルディの『ドン・カルロ』などがその代表的作品です(もちろん他にもあります)。

『悪魔のロベール』の派生作品も多数

大ヒットを記録したオペラ『悪魔のロベール』ですが、本作をもとに多くの芸術家たちがオマージュ作品を制作しています。

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たとえば、フランツ・リストは『マイアベーアのオペラ「悪魔のロベール」のカヴァティーナ』や『マイアベーアの「悪魔のロベール」の回想』などのオマージュ作品を発表しており、フレデリック・ショパンも、オーギュスト・フランショームとの合作により、チェロとピアノのための『マイアベーアの「悪魔のロベール」の主題による協奏的大2重奏曲 ホ長調』といった作品を作曲しています。

印象派の画家エドガー・ドガによる「マイアベーアの『悪魔のロベール』のバレエ場面」も、本オペラ内のバレエシーンを描いた作品です。これらの作品から、オペラ『悪魔のロベール』が、いかに当時の芸術界に影響していたかをうかがい知れます。

オペラ『アフリカの女』の解説

1865年4月にパリ・オペラ座にて初演されたマイアベーア最後のオペラです。5幕2場で構成されたグランド・オペラであり、演奏時間は5時間を超えます(短縮版でさえ2時間30分)。オペラ制作当初は『バスコ・ダ・ガマ』として作曲されましたが、マイアベーアが初演を待たずにこの世を去ったため、再編を担当したフランソワ・フェティスにより『アフリカの女』へとタイトルが変更され、それ以来『アフリカの女』のタイトルが定着しています。

15世紀後半のポルトガルとインド洋を舞台とした本作は、初演から大きな話題となり、同年7月にロンドン公演、12月にはニューヨークでも公演が行われました。なかでも第1幕の長大な合唱と、第4幕のバスコ・ダ・ガマによるアリア「素晴らしい国、おおパラダイス」が広く知られています。

また、7重唱で締めくくられる第1幕の手法は、後年のジュゼッペ・ヴェルディに大きな影響を与えました。

近年再び注目を集める

一世を風靡した本オペラも、他のマイアベーア作品と同様に衰退の一途をたどり、現在ではほとんど上演されることはありません。しかし21世紀現在、マイアベーアのグランド・オペラは再び注目を集めており、2013年にはマイアベーア没後150年を記念した記念公演が行われました。その後もベルリンやフランクフルトなどでも再演され、徐々にマイアベーア作品の復活の兆しが見え始めています。

まとめ

今回はマイアベーアを代表するオペラ2作品を紹介しました。どちらの作品も、初めて知った方が多いのではないかと思います。クラシック音楽に馴染みのない方にとって、オペラはとっつきにくいジャンルかもしれません。しかし、音楽や舞台、衣装やバレエなど、さまざまな芸術が詰まったオペラには、これまでに観たことがない魅力が満載です。この記事をきっかけに、少しでもオペラに興味を持っていただけたら幸いです。

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