男性指揮者の服装について。定番の服装や注意点、選び方のコツは?

男性指揮者の服装の定番と言えばやはり燕尾服が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。裾の部分が尻尾のように長く、先がふたつに割れているアレです。
その形がツバメの尻尾に似ていることから燕尾服と呼ばれていますが、そもそも、燕尾服とはどのようなものなのでしょうか。そして、なぜ指揮者は燕尾服を着るのでしょうか。

燕尾服とは

燕尾服は、日本でも明治以降、夜の最高級の正装として位置づけられており、各国の首脳が集う晩餐会などでもよく用いられます。元々、乗馬服として発達したもので、裾が割れているのもそのせいです。それがヨーロッパ各国に広がって男性の正装となりました。
内閣発足のときなどに、各大臣がずらっとならんでいる写真を目にしますが、そのとき着用されている裾の長い上着はモーニングと呼ばれるもので別物です。結婚式で新郎・新婦の父親がよく着ていますね。モーニングは日中の正装でネクタイが合わせられますが、燕尾服は夜の正装で、白の蝶ネクタイを合わせます。見た目では、前裾が曲線になっているものがモーニング、切れ込みが入っているものが燕尾服です。

燕尾服の構成

ジャケット

 

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色は黒が正式とされています。産業革命のときは工場から出る排煙で着ているものがすぐに黒くなってしまいました。その汚れが目立たない黒が好まれたことに由来します。また、前ボタンはかけません。

シャツ

 

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シャツは白のイカ胸シャツを着用します。

タイ

 

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白の蝶ネクタイ一択です。黒の蝶ネクタイはタキシードと合わせるためのものです。

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黒のエナメルが好ましいとされます。

他にもポケットチーフなど様々な小物の決まりがあります。
燕尾服は夜の正装なので、かつては舞踏会でも好んで着用されました。そこで、靴に靴墨をつけて光沢を出すとお相手の婦人のドレスの裾を汚してしまいます。それで、素材に光沢のあるエナメルの靴が用いられるようになりました。

指揮者はなぜ燕尾服を着るのか

今でも多くの場合、演奏会は夕方以降に開演することが多いですよね。ヨーロッパではさらに遅く、終演が深夜になる場合もあります。
かつては、仕事を終えた紳士、淑女がいちど自宅で夜の正装に着替えて食事をし、そのあと、演劇やコンサートなどの娯楽に出かけていました。もちろん指揮者だけではなく、楽団員もお客も多くの人が燕尾服を着ていたわけです。今でも、プロのオーケストラの奏者の中には燕尾服を着用されている方がいらっしゃいますね。
時代が変化し、気軽にコンサートを楽しめるような時代になり、また、仕事のあとに直接コンサート会場に行くことも増えてきました。そこで徐々に、男性が夜の娯楽のために燕尾服を着ることも少なくなりましたが、しかし、指揮者においては、その夜の主役という位置づけから、また、どんなに動いても背中からシャツが見えにくいという理由で、昔のまま、燕尾服を着る習慣が残ったのでしょう。

伝統というのは、合理的な理由があるなしに関わらずそれがスタンダードであることを意味します。聴衆がいちばん音楽に集中できるように、奏者は黒で統一され、指揮者は燕尾服を着用するのです。ひとり、違う色のタキシードを着ていたり、指揮者が別の服装をしていたりすると、そこになんらかの意味が生じてしまい、聞いている人たちの気を散らしてしまうと考えられているのです。

燕尾服の選び方

みなさんが指揮者としてデビューするにあたって燕尾服を手に入れようとすると、まずデパートの紳士服店でオーダーすることになります。近年ではネットオークションなどで既製品も購入できますが、自分の体にきちんと合わせて作るべきものですのでオーダーメイドをお勧めします。
元々、ダンスに適した服装ですので、見た目以上に動きやすいです。それでも指揮者の動きは激しいですので、より軽めの生地がお勧めです。また、寸法もすこしゆったり目に作ってもらうとより動きやすいでしょう。
そして、他の小物などもひと揃い購入すると、最低でも、おおよそ20万円から30万円くらいになります。

指揮者の衣装事情

少し、裏話をご紹介します。
燕尾服は、使っているうちに、指揮をしている最中に特にすれやすい、脇のあたりからほつれができてきます。つまり、燕尾服は指揮者にとっては消耗品です。活躍している時期は何度も買い替えることになります。また、オペラなどでは数日間、本番が続くこともあります。クリーニングが間に合わないので、数着手元に置いておかなくてはなりません。演奏者であれば同じ服を着ても問題ないですが、指揮者は本番一回で汗をたっぷりかくので、やはり、複数必要になります。
そして、本番が終わればそれらをクリーニング店に持っていきます。たいてい、店員さんから「これは何ですか?」と質問されます。それくらい、燕尾服は一般的ではありません。そして、燕尾服上下、ウエストコート、蝶ネクタイ、シャツまとめて約5,000円のクリーニング代金が毎回かかることになります。新しい服が1着買える値段ですね。
指揮者は楽器のメンテナンス代のかわりに、衣装にお金がかかるものなのかもしれません。

まとめ

近年では、合理的な考えが進み、燕尾服ではなくさらに動きやすい服装を選ぶ指揮者も増えてきましたが、それでもまだ多くの指揮者が燕尾服を着用しています。
昔ながらの装いをすることで、クラシック音楽の長い伝統の重みを感じることができるのもその理由のひとつでしょうし、オーケストラのメンバーやお客様に対する敬意の表れと考えることもできます。
また、普段めったに着る機会のない最高の礼服を着て、多くの人の注目を浴びることができるというのも指揮者の醍醐味のひとつかもしれませんね。

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