カール・リヒター マタイ受難曲の解説と分析。その魅力や聴きどころ。

出典:[amazon]バッハ:管弦楽組曲第2番&第3番、ブランデンブルク協奏曲第5番

バッハの名前は、ベートーヴェンやモーツァルトと同じく誰もが一度は聞いたことのある名前だと思います。「音楽の父」として学校で習った方も多いことでしょう。バッハは、生涯で1000曲以上もの作品を残しました。そしてバッハが残した作品は、現代でも多くの人々を魅了し続けています。なかでもキリスト教音楽への貢献が大きく、「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」はバッハの作品の中でも最高峰の作品です。そこで本記事では、バッハの最高傑作の一つである「マタイ受難曲」について解説します。

バッハの生涯

ヨハン・セバスチャン・バッハは、1685年ドイツに生まれました(同年にヘンデルとスカルラッティも生まれています)。幼くして母を亡くしたバッハは、兄に引き取られ早くから自活の道を歩みました。生涯で2度結婚し、子供が20人もいたというのは有名なエピソードです。

宮廷音楽家として数多くの領主に仕えたバッハでしたが、1749年に脳卒中で倒れてしまいました。この時は周囲の献身もあって、無事に回復して仕事に復帰したものの、翌年には2度の目の手術が失敗し、ほぼ失明に近い状態になってしまいました。高齢になり体力も衰えていたバッハは、寝込むことが多くなり、ついに1750年65歳でこの世を去ったのでした。

エピソード

無類のコーヒー好きで、1日に何十杯もコーヒーを飲んでいたバッハ。コーヒー好きが高じてか、コーヒーカンタータ(俗称)といったユニークな曲も作曲しています。亡くなったときの遺品には、5つのコーヒーポットとカップが添えられていたそうです。

また、「勤勉が服を着て歩いている」と称されるほど真面目だったバッハは、有名オルガニストの演奏を聞くために、片道およそ450キロの道のりを徒歩で往復したという伝説も残っています。

マタイ受難曲とは

マタイ受難曲は、新約聖書「マタイによる福音書」の26・27章を題材として作曲された、バッハの最高傑作の一つです。1727年にライプチヒの教会で初演されました。受難とは、裁判と処刑の際にイエス・キリストが受けた肉体的・精神的苦痛のことを意味します。
マタイ受難曲は、2部構成で全68曲使用されており、演奏時間が約3時間にもおよぶ大作です。
バッハの没後はほとんど演奏されることなく忘れ去られていましたが、ロマン派を代表する作曲家メンデルスゾーンによって再び脚光を浴びるようになりました。

テーマ

「マタイ受難曲」では、イエス・キリストが弟子たちにみずからの運命を預言するところから始まり、十字架の刑に処せられて死亡したあと、墓が封印されるまでが語られています。この物語の途中には、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画で有名な「最後の晩餐」や「ユダの裏切り」といった有名なシーンも含まれています。

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登場人物

マタイ受難曲の主人公はイエス・キリストですが、物語に関わる重要人物が何人も登場します。主要登場人物を簡単に紹介します。()内は声楽パートです。

・エヴァンゲリスト(テノール)・・・福音史家といわれています。主に「マタイ受難曲」の進行役のような役割です。
・イエス・キリスト(バス)・・・物語の主人公です。
・ユダ(バス)・・・イエスの弟子の1人。イエスを裏切ります。
・ペテロ(バス)・・・イエスの弟子の1人。
・ピラと(バス)・・・ローマの総督

形式

主に使われている音楽形式を紹介します。
・レチタティーヴォ・・・日本語では叙唱(じょしょう)と訳されています。歌唱様式の1つで、会話するように歌う独唱です。

・アリア・・・ソロパートによる独唱です。レチタティーヴォとは違い情緒的なメロディーが特徴です。

・コラール・・・教会に集まる人が歌う讃美歌です。わかりやすい旋律で作曲されています。

その他、レチタティーヴォと合唱の組み合わせたパートもあります。

編成

舞台の右側と左側に、それぞれオーケストラと合唱を配置した編成になっています。こうすることで、双方で対話をしたり、一方のパートで語られたエピソードを、もう一方のパートが解説することができ、物語全体に立体感を持たせています。

合唱

物語の役割ごとに合唱が異なります。例えば、弟子たちや民衆を表す場合は4声部の2重合唱で、イエスを攻撃する側の長老や司祭を表現する場合には、8声部の2重合唱で表現されています。イエス・キリストへの非難や反発を表す際に8声部の2重合唱であるのは、イエス・キリストを取り囲む民衆の反発の大きさを表す演出と考えられます。

おすすめ演奏

「マタイ受難曲」はたくさんの名演があります。特におすすめは、カール・リヒターが指揮した演奏です。カール・リヒターの演奏するバッハは、その後のバッハ解釈に大きな影響を与えたと言われています。カール・リヒターのバッハに対する深い理解と解釈が、この作品が持つ荘厳さと気品を存分に表しています。1958年と1979年の2度録音しており、どちらがすぐれているか、ファンの間で意見が分かれるところです。

まとめ

今回はバッハのマタイ受難曲について解説しました。クラシック音楽にあまり馴染みのない方でも、これを機会にぜひマタイ受難曲を聞いてみてください。大変長い作品ですが、美しい音楽がこの1曲にたくさん入っています。1度聞けば、きっとお気に入りの曲が見つかるはずです。

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