指揮者の存在意義。上手い下手の基準って何?いなかったらオーケストラはどうなる?

「指揮者ってなんのためにいるの?」誰でも一度はこんな疑問を感じたことがあるかもしれません。指揮者にとってもこの質問に答えることは骨が折れることのように思います。

確かに指揮者は音を出しませんし、テンポを取るだけなら巨大なメトロノームを置いておくだけで事足りるのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。AIの指揮者!なんていうのも可能に思えるかもしれません。

みなさんは学生の時、合唱コンクールに参加された経験はありますか?指揮者といえば、音楽歴なんかは関係なく、クラスの少し目立つ生徒が選ばれて、上手か下手かの基準もピアノや合唱そのものよりは判断がつきにくかったのではないでしょうか。

しかし、プロの演奏家たちの中で、管弦楽団で演奏する際に、指揮者は一切不要だと答える人はゼロです。また、奏者は良い指揮者と悪い指揮者の明確な区別も持っています。

そもそも指揮者はどのようにして生まれたか

ジャンルにもよりますが、みなさんがご存じの通り、かつては多くの場合、作曲家が指揮者を兼ねていました。映画の中でもモーツァルトやベートーベン自身が自作の交響曲を指揮しているシーンがありますね。その後、19世紀の後半(ブラームスやワーグナーが活躍した時代)にハンス・フォン・ビューローが登場し、作曲家と指揮者が分化されたと言われています。

つまり、クラシック音楽がロマン派に移行した時代、過去の古典派の作品を演奏するにあたって、楽曲の再構築が必要とされるようになったのです。今は亡きモーツァルトやベートーベンに代わって、楽曲を解釈し、作曲家の意図したとおりに再現するためのリーダーとして指揮者が生まれました。

ここで問題になるのが「作曲家の意図」です。時代が進むにつれて、当然、作曲家は死に、楽曲だけが残されていきます。そうなると、作曲家の意図は、作曲家自身ではなく、その作品の中に生きていることになり、その作風から、例えばベートーベンは神格化され、ドイツ音楽の精神的支柱のように扱われるようになりました。そして、「作曲家の意図」は、それぞれ時代の人々がその作曲家に何を求めるかによって変化していくこととなります。

ベートーベンの交響曲「運命」の第一楽章、第二主題直前のホルンのファンファーレの問題は有名です。提示部ではホルンで演奏されますが、再現部ではファゴットに移ります。ベートーベンが書いた以上、それはファゴットで演奏されるべきなのでしょうが、実はこの部分が再現部でもホルンで演奏されることが多くあります。(現代では少なくなりましたが、20世紀の録音では多く聞かれます。)

それは、ワインガルトナーという指揮者が、ベートーベンの時代のホルンでは、再現部の音域での演奏が難しかったため、ベートーベンはやむを得ずファゴットを用いたのであって、作曲家の意図は提示部同様ホルンで演奏することだった、と解釈したためです。その後、多くの指揮者がワインガルトナーの提言を踏襲したのは、ファゴットよりもホルンを用いた方が堂々と響くことが、当時の人々が求めたベートーベン像と合致したからにほかなりません。その後、21世紀ではそのように演奏されることはまずなくなりました。

このように、クラシック音楽といえども、時代とともに解釈が変化していきます。作曲家が死んでも、その作品を享受するのが生きている我々である以上、それは当然ことです。研究し博物館に保存するだけのものではなく、今を生きる私たちの心を揺さぶり続けるために、常に演奏スタイルを新たにしていく必要があるのです。
今までの伝統を尊重しつつ変化を促していくという点において、指揮者の役割のひとつである「解釈」の重要性が生まれるというわけです。

テンポ

話題が少し抽象的になりました。指揮者の具体的な必要性の中に、次のようなことがあります。

こんな試みはどうでしょうか。プロのオーケストラが演奏した録音を聞きながらメトロノームをセットしてみてください。楽譜にテンポ変化の指示がない箇所でもずれていきます。カルロス・クライバーが演奏する『カルメン』の前奏曲の後半、三拍子の部分は一拍ごとにテンポが変化しています。

にもかかわらず、その演奏は急いだり遅れたりしているようには聞こえず、むしろ自然に聞こえます。実は、一定のテンポのごとく聞こえるためには、テンポは箇所に応じて変化させなくてはならないのです。低音楽器が旋律を担当する場所は少し遅めに、高音楽器だと少し速めに演奏することで自然な流れが生まれるというのも具体例のひとつです。もちろん、演奏技術を身につける段階では、メトロノーム通りに演奏する訓練が必要ですが、最終的には、テンポを自在に操り、意図的に変化させることが求められるわけです。

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そこで指揮者の出番です。音楽全体を俯瞰して、楽譜に指示がなくても、楽器の編成や曲の情緒に合わせてテンポを微調整し、音楽の流れを作っていくという存在はオーケストラには必要不可欠なのです。

指揮者のいないオーケストラ

近年、「最高の男たちの冒険」と銘打たれた指揮者のいない管弦楽団が素晴らしい演奏を披露するなど、指揮者なしで成功を収めている楽団は世界中に数多くあります。

室内楽とオーケストラの違いを想像すると、指揮者のいない、奏者のアンサンブルだけによる室内楽は、独特の緊張感や生命力を生み出すように思います。室内楽では、弦楽器なら弦楽器のみの編成になりますが、それを管弦打楽器がそろったオーケストラに応用することの意義もその点にあるのでしょう。

しかし、現実的に考えれば、指揮者なしで管弦楽団が成立するには、まず小編成であること、次に、演奏する楽曲の拍子が単純で、テンポの変化が頻繁ではないことが条件となるでしょう。例えば、ストラビンスキーの『春の祭典』を大編成で指揮者なしで演奏するのは無理があるのは想像に難くありません。

奏者のアンサンブル技術は基本的に目と耳に依存します。指揮者なしで演奏するなら、コンサートマスターなど楽団のリーダーのブレスや動きを目で把握し、他の奏者の音を聞きながらタイミングや音色を見極めていきます。しかし、大きな編成のオーケストラになると、どうしても同じパートの弦楽器内でもずれが生じます。(むしろ、そのずれが効果的である場合もしばしばです)すると、弦楽器の後ろに陣取る管楽器のメンバーにとって正しいタイミングを捉えることは難しくなってきます。当然、プルト数(弦楽器の人数)が増えれば増えるほど、それはより困難になります。

また、楽器によって、発音までにかかる時間には差があります。例えば、ホルンのように管が長い楽器はその時間が長くなります。ですので、通常、指揮者はホルンの入りは早めにタイミングの指示を送ります。同様に、同じフォルテでも、弦楽器のフォルテと管楽器のフォルテ、トゥッティ(楽団全体)のフォルテとでは指揮者のブレスや棒の動きは全く異なってきます。優秀なコンサートマスターが演奏しながら身振りでフォルテを示しても、それはバイオリンのフォルテの表現であって、それだけできらびやかな金管楽器の音色を引き出すのは難しいと言わざるを得ません。同時に、このことが、少し触れたように、元来、指揮者のいない室内楽という形態が、弦楽器なら弦楽器、管楽器なら管楽器だけで編成されていることの理由のひとつです。

弦楽器、管楽器、そして打楽器は全く違う仕組みや音の種類をそれぞれ持っています。だからこそ、豊かな響きが実現するのです。そこに人の声が加わるオペラなどは言うまでもありません。そこで、それらをまとめ上げるためには、あえて何の楽器も演奏していない、指揮者という存在が必要になってくるのもうなずけるのではないでしょうか。

まとめ 指揮者の上手い下手

「指揮者のいないオーケストラ」で述べた通り、指揮者は性質の違う楽器をまとめ上げるという仕事を担っています。しかし、反対に、指揮者が各楽器の特性を十分に理解していなければどうでしょうか?「奏者だけで演奏した方がスリリングな演奏を楽しめるのでは?」という発想が出るのもうなずけます。

指揮者の能力評価には様々な項目がありすぎて、なかなかすべてが100点満点とはいきません。特に指揮者には得手不得手が多いのも事実です。

ここまで、指揮者の役割の一部をご紹介してきましたが、指揮者の能力を測るには音楽について深く知っていく必要があることがご理解いただけたのではないでしょうか。指揮者を知ることは音楽そのものを知ることだと言っても過言ではないかもしれません。

何気なく耳にするオーケストラの演奏にも、歴史や伝統に裏打ちされた工夫があり、それは大変奥深いものだと思います。その奥深さがクラシックの音楽の魅力のひとつなのは言うまでもあれません。

ここまで、指揮者の仕事の一部をご紹介してきましたが、この記事が、みなさまが音楽をより楽しむための助けになれば幸いです。

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>>指揮者になるには?向き不向きはある?なるために必要なスキルは何?

 

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