出典:[amazon]プロコフィエフ: 交響曲全集
19世紀後半に生まれ、20世紀に活躍した作曲家プロコフィエフ。プロコフィエフは、同時代の風潮に属さず、独特な個性を発揮した偉大な作曲家です。5歳で作曲を始め、9歳で最初のオペラを作曲し、その後、オペラやバレエ音楽の作曲はプロコフィエフにとってライフワークの一つとなりました。また、ピアノ曲も多く作曲しており、なかでもタランテラを含む「子供の音楽 12のやさしい小品」はコンクールでも課題曲として演奏される作品です。今回は、プロコフィエフのバレエ傑作「ロメオとジュリエット」とピアノ曲「タランテラ」を解説します。
ロメオとジュリエットとは
※組曲版
「ロメオとジュリエット」は、プロコフィエフが作曲した傑作バレエ音楽です。題材はシェイクスピアの同タイトルの戯曲を元に、シェイクスピア学者のラドロフとギリシャ劇の研究者であったピオトロフスキーの協力を得て作成されました。
当初はレニングラード・バレエ学校の創立200年を祝うために作曲されましたが、酷評にあったため、契約を撤回されるという事態に陥りました。そのためプロコフィエフは、バレエが上演される前に「ロメオとジュリエット組曲」を作曲し、1936年に第1組曲をモスクワで、翌年1937年に第2組曲をレニングラードで初演しました。
バレエ自体が初演されたのは1938年になってからで、チェコスロバキアにて披露されました。現在でも大変に人気のある作品で、多くの振付師によって演出がなされいます。近年の振り付けでは、イギリスの振付師マシュー・ボーンがこの作品の振り付けを行い、映画化もされています。
プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」で興味深いのは、台本のいきさつです。もともとの案では、原作の結末と異なり「ジュリエットが生きていた」という設定だったそうです。しかしその後、振付師たちとの相談の結果、原作と同様に悲劇的結末へと変更しました。全4幕9場で構成され、作品内では52曲もの音楽が演奏されます。演目時間はおよそ2時間半におよぶ大作です。
なかでも有名な曲は、第1幕第2場で流れる「騎士たちの踊り」です。この曲はアニメ「のだめカンタービレ」やCMなどでも使われていおり、大変迫力のある堂々とした勇ましい作品です。ピアノ独奏版では「モンターギュ家とキャピュレット家」として編曲されています。
楽曲編成について
バレエ版の楽曲編成は一般的なオーケストラ構成となっていますが、大きい3管編成であるのが特徴です。以下に編成をご紹介します。
- 木管楽器
- 金管楽器
- 打楽器
- 鍵盤楽器
- ハープ
- 弦楽合奏
そのほか、演奏会用組曲1番から3番、ピアノ独奏にも編曲されています。ピアノ独奏版は1937年にモスクワにてプロコフィエフ自身によって初演されました。
難易度は?
バレエ「ロメオとジュリエット」の作品内から抜粋し、ピアノ独奏用として編曲された「10の小品」という作品があります。この作品は10曲で構成され、曲によって難易度に差があるものの、上級の技術が必要とされることは間違いありません。また、全10曲の演奏時間はおよそ35分程度とされているので、演奏技術とともに体力も求められます。初心者の方にはかなりの練習が必要とされる作品です。
タランテラとは
タランテラは、プロコフィエフがソビエトに帰国した1935年頃に作曲された作品です。ソ連共産党からの要請で、芸術家たちには「子供にもわかりやすい明快な作品をつくること」が義務付けられました。プロコフィエフのタランテラは「子供の音楽 12のやさしい小品」の1曲です。
タランテラとは、8分の6拍子の速いテンポの舞曲的音楽様式です。もともとはイタリア南部のタラント地方発祥の音楽と言われています。また一説によると、毒グモのタランチュラに噛まれたときに踊ると治るという伝説からその名前がつけられたという説もあります。
タランテラは多くの作曲家に採用された音楽様式で、ショパンやリストのタランテラなどが有名です。
楽曲編成について
ピアノ独奏用のため、ピアノのみで演奏します。ニ短調の躍動感溢れるテーマから中間部へ突入し長調へと転調します。再現部になると、躍動感がさらに高まり、最後はカデンツァで明瞭に終わります。
難易度は?
タランテラは子供のための音楽として作曲された作品ですが、コンクールでも課題曲として演奏される機会の多い作品です。上級の技術とは言わないまでも、一つ一つのフレーズや最後のカデンツァを明瞭に演奏するにはある程度の技術が求められます。
具体的な難易度としては、バイエル修了からソナチネ程度の技術が必要とされています。タランテラは速いテンポが求められるため、弾きこなすには正確な指のタッチとともにフレーズの表現力が必要です。オクターブは出てきませんが、指の飛躍が多いので、間違えることなく正確に弾くにはかなりの練習が必要となるでしょう。
まとめ
今回は、傑作バレエ音楽「ロメオとジュリエット」と「タランテラ」について解説しました。どちらもプロコフィエフらしい斬新な旋律と大胆な発想が楽しめる名作です。ピアニストでもあったプロコフィエフは、自身の作品の多くをピアノ独奏へ編曲しています。今回ご紹介した作品以外にも、ピアノ曲へ編曲している作品が多くありますので、ご興味が沸いたらぜひ演奏にチャレンジしてみてください。
>>セルゲイ・プロコフィエフってどんな人?その生涯や性格は?死因は?
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