ジャック・オッフェンバックの楽曲の特徴及び評価。おすすめ代表作4選

出典:[amazon]Jacques Offenbach

天才作曲家ロッシーニをして「シャンゼリゼのモーツァルト」と称されたオッフェンバック。オッフェンバックは19世紀フランスで爆発的人気を得た作曲家です。生涯で100作を超えるオペレッタを作曲し、ヨハン・シュトラウス2世やドビュッシーなどに大きな影響を与えました。代表作「地獄のオルフェ」は、日本では「天国と地獄」として知られ、コンサートレパートリーとして頻繁に演奏されています。今もなお色褪せない人気を誇るオッフェンバックの作品には、他にどのようなものがあるのでしょうか。今回はオッフェンバックの作品の特徴や代表作について解説します。

オッフェンバックの楽曲の特徴と評価について

オッフェンバックの楽曲の特徴とはどのような点にあるのでしょうか。同時代の作曲家の評価を交えながら紹介します。

時代の風刺で絶大な支持を得る

オッフェンバック作品の1番の特徴は、フランス第二帝政に対する痛烈な風刺を、オペレッタで表現した点にあります。その対象は実業家や権力、娼婦、軍隊、独裁政治などに及んでいますが、それらを悲劇として表現するのではなく、オペレッタという喜劇で作曲することで逆説的に大衆の心を掴み、オッフェンバックは時代の寵児として人気を獲得するようになります。それはフランス第二帝政に対する民衆の不満を鋭敏に感じ取った、オッフェンバックの才能だったのかもしれません。

膨大な数のオペレッタを作曲

1860年代、オッフェンバックは黄金時代を迎えます。「美しきエレーヌ」(1864年)、「青ひげ」(1866年)、「ラ・ペリコロール」(1868年)、「盗賊」(1869年)などのオッフェンバックの代表作は1860年代に作曲され、これら全てが大ヒットするという空前の人気を獲得しました。あまりに人気だったため、1晩に4つの劇場で異なる作品が演奏される異例の事態が発生するほどでした。一転して晩年は経済的困窮に喘ぐことになりましたが、それでも作曲を続け、生涯で100作以上のオペレッタを遺しています。

作品の評価は賛否両論

聴衆から大きな人気を得たオッフェンバックでしたが、知識人・文化人の評価はさまざまでした。晩年のオッフェンバックは不評を買うことが多かったようで、ときには「フランス劇音楽を低俗にした」と罵られました。また『居酒屋』などの作品で知られる作家エミール・ゾラは、「オペレッタは邪悪な獣のように駆逐されるべき存在」としてオペレッタを非難しています。

一方で同時代の作曲家たち、例えばエミール=サンサーンスはオッフェンバックの作品について「豊かな創造力、メロディを生み出す才能。時に上品な和声・・・当然彼は成功した」と賞賛しています。またワーグナーは「オッフェンバックは崇高なモーツァルトのように書くことを心得ている」といった賛辞を送るなど、当時の評価は真っ二つに分かれていたようです。

オッフェンバックのおすすめ代表作4選

オッフェンバックの代表作を紹介します。どの作品も今日でも演奏機会の多い作品なので、ご存知の方も多いかもしれません。

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青ひげ

1866年にパリで初演された、全3幕からなるオペレッタです。『長靴をはいた猫』で有名なシャルル・ペローの『青ひげ』をベースとしていますが、その内容は当時のフランス世相を風刺したパロディ的要素の強い作品です。ナポレオン3世の時代に作曲された本作は、実生活をあざけるような作風が聴衆に受け入れられ大ヒットとなりました。
パリ初演後には、ウィーン、ブダペスト、ロンドン、ニューヨークでも上演され、いずれの地でも好評を博しました。

パリの生活

「青ひげ」と同様に1866年にパリで初演されたオペレッタです。当初は5幕で構成されていましたが、のちに4幕に変更されています。日本ではそれほど知られていませんが、ヨーロッパでは現在でも演奏機会の多い人気作です。1860年代を舞台にした本作は「パリ・オペレッタの最高傑作」と称され、作品はパリ万国博覧会を記念して作成されました。
初演から大成功を収め、1年で217回も上演されるロングランとなりました。

ラ・ペリコロール

1868年にパリで初演されたオッフェンバックの代表作の一つです。全3幕で構成されており、オッフェンバックの作品でもっとも人気のある作品とされています。台本は『カルメン』で知られる作家メリメの『サン・サクラメントの馬車』を元にしており、18世紀のスペイン統治下にあったペルーのリマが舞台となっています。権威や社会に対する不満を痛烈なユーモアで描いた本作は、当時の聴衆から受け入れられ大ヒットとなりました。1876年に日本でも上演されているのは驚きです。

ホフマン物語

最晩年に作曲されたオッフェンバック唯一のオペラです。タイトルにもあるように、ドイツロマン派の作家E・T・Aホフマンの3つの作品を題材にして作曲されました。完成を待たずにオッフェンバック病死したことで未完となりましたが、友人の作曲家ギローの補筆により、1881年パリで初演されました。

オランピア、アントニア、ジュリエッタの3人の女性とホフマンとの悲恋を描いた恋の物語です。本作は何度も改訂され、現在は第6版を用いるのが通例となっています。また、4度にわたり映画化もされており、映像作品としても親しまれています。「地獄のオルフェ」となび、現在でもとても人気のある作品です。本作はまさにオッフェンバックの最高傑作と言えるでしょう。

オッフェンバックの作品を振り返って

劇場の支配人をしながら多くのオペレッタを作曲したオッフェンバック。61年という比較的短い生涯だったことを考えると、その制作意欲と才能に舌を巻いてしまいますね。オッフェンバックの死後、作品の多くが忘れられてしまいしたが、やがてエリック・サティやフランス6人組の手によって再び脚光を浴びることになります(オッフェンバック・ルネサンス)。おそらくそれは、オッフェンバックの作品に普遍性があったからかもしれません。オペレッタを聴くのは大変だと思いますので、有名な序曲や歌曲だけでも聴いてみてはいかがでしょうか。

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