指揮者がオーケストラとの関係を良好にするために心掛けていること3つ

指揮者とオーケストラ。切っても切り離せない関係ですが、その立場は大きく違います。例えばオーケストラの団員はいわばそこに就職している「正社員」のような立場ですが、指揮者は常任指揮者であっても多くの場合は「契約社員」や「派遣」のようなイメージです。あくまで「外注」になります。海外や歌劇場ではまた異なってきますが、国内のシンフォニーオーケストラの場合はおおよそ、そういうイメージで間違いないと思います。
長年、共に演奏してきた団員たちの中に、いきなり現れてリハーサルで指示を出し、本番を共にするのが指揮者なのです。

カラヤンやクライバー、かつての巨匠と言われる指揮者たちには、絶対的な独裁者のようなイメージがつきものかもしれませんが、現在では実際は、対人能力と、オーケストラの要求と自らの要求を同時に実現していくバランス感覚が求められます。

多くの場合、指揮者が所属するプロダクションとオーケストラの契約によって共演が実現します。ですので、音楽家といえども契約内容を履行することが不可欠になり、そもそも、その契約を越えるような活動はほとんどできません。

それでも、人と人との関係ですので、やはりオーケストラと良好な関係を築くためにできることもたくさんあります。ここでは、指揮の技術以外で、いかに指揮者はオーケストラと信頼関係を築いていくのか、その一端をご紹介します。

1.時間の厳守

「クライバーは遅刻の常習犯だった」というような記事も見かけますが、実際は契約通りに時間を守ることが何より重要です。入り時間、リハーサルの開始時間、は当然ですが、もちろん終了時間も厳守です。時間を延長して練習をすることは歓迎されるように思われるかもしれませんが、オーケストラの団員も当然、実働時間は定められておりそれを越えて拘束することは契約違反になるのです。
また、近年では、休憩時間も定められていることが多く、(おおよそ、1時間ごとに10分という場合が多いです)それも守らなくてはなりません。既定の時間を少しでも超えて練習が続くと、すぐにマネージャーからストップの声がかかります。そういうことが続くと、オーケストラの団員が、練習を仕切る立場である指揮者に対して不信感を抱き始めるということもあります。
練習の計画をしっかり立てて、「きちんと決まりを守っています」という姿勢を見せることが大切でしょう。

2.なるべく奏者のストレスを減らす工夫

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練習に集中していると時間を経つのも忘れることがありますが、それは指揮者が常に体を動かし続けているからです。しかし、奏者は練習中の待ち時間が長くなる場合があります。特に管楽器や打楽器の奏者は、1曲、もしくは楽章丸々出番がない、ということもあります。
もちろん、奏者は「待つことも仕事」という認識でいますが、それでも、あまりに待ち時間が長いと集中力を保つのも大変になってきます。
例えば、第四楽章だけトロンボーンが必要なシンフォニーを練習するとします。最初にざっと通して、再び一楽章から返して細かく練習し、結局、時間の都合で三楽章までしか練習しなかったとします。トロンボーン奏者から不満が出るのは当然です。
本番前に通して練習するときなど以外で、ある程度練習の順序を指揮者が決められる場合では、例えば出番の少ない楽器の箇所をなるべくまとめて練習してしまって、早めにその奏者を取りにする(練習を終えてもらう)ということも可能です。
近年、プロのオーケストラがゲーム音楽を演奏することも増えましたが、小曲をいくつも取り上げるプログラムの場合はこの方法は特に有効です。奏者に、「この指揮者はちゃんと奏者のことも考えてくれている」という印象を持ってもらえます。

また、リハーサル中、ある特定の箇所を繰り返し練習するとします。その箇所の直後に別の楽器が加わってくる場合、その楽器の奏者は、何度も楽器を構えては音を出さずじまいということを繰り返すことになります。そこで、「今から〇〇までを何度か練習するので、構えなくても結構です。次に進むときはあらかじめお伝えします」とひとこと伝えておけば、その奏者はそんなストレスを感じる必要はなくなります。
なるべく相手の立場に立って、誰もが気持ちよく練習することができるように気を遣うことが、歓迎されるのです。

3.求められていることを知る

ひとことに指揮者と言っても、その立場は様々です。常任なのか客演なのか、もしくは、音楽監督や芸術監督として指揮をするのか。
オーケストラにはそれぞれ、目指す演奏スタイルと個性があります。ボーイングやビブラートのかけ方など、オーケストラが長年培ってきた独自の技術があり、それらがオーケストラのカラーを決定づけていきます。オーケストラの方針を決める、音楽監督のような立場であれば、その伝統を少し変えて新しいことを試すこともできるでしょうが、そうでない客演指揮者がいきなりオーケストラの求めることと正反対のことを指示すれば反感を買うのも当然です。
もちろん、ボーイングの決定は指揮者の権限ですが、若手指揮者の場合、たったひとつのボーイングを変更するに戦々恐々とすることも少なくありません。しっかりとした根拠を示すことが求められるのです。
もちろん、指揮者にも個性があります。自分の個性とオーケストラの個性双方を考慮した上で、今回の公演で「自分が何を求められているのか」ということを考えなくてはなりません。
与えられた役割の中でベストを尽くす、という姿勢がオーケストラから信頼されるためには大切でしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。指揮者は人をまとめる立場である以上、指揮の技術だけではなく、様々な対人能力が要求されることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
指揮者は基本的に気さくな印象の人が多いような気がします。挨拶も積極的にし、どんな人にも前向きな印象を与えることのできる人間性が備わっています。
ただ、必要以上に腰が低かったり、ただ人がよかったりするたけでは統率力が欠けていると思われかねません。
相手を気遣う心を持ちながら、自分の考えを伝え、きちんと相談をし、共に音楽を作り上げていくことができる人物が指揮者としての尊敬を得るのだと言えるかもしれません。

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